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第8話

「…………二人は知り合い?」 「ハイ。高校の友達で。」 律が尋ねると麗人が答えた。 誰が友達だ。お前と友達だった覚えはない! 「相変わらず細いな。ちゃんと食ってんの?」 意地悪な口調。 そういうとこも嫌いだったんだよ! 腰を抱かれて手をバシッと払い、思いっきり睨んでやる。 「パン職人、パティシエとして入った田中 虎。20歳です。よろしくお願いします。」 用意した挨拶をしながら、頭は麗人の事で一杯だった。麗人にゲイだって皆にバラされたら、どうしよう…… 律に引かれたり失望されたりしたら、俺…… 一日目の研修、打ち合わせは終わり、皆、帰っていった。 「トラ。ご飯食べてく?何か作ってあげるよ。」 律が誘ってくれ、顔を上げる。 「すみません。」 遮ったのは麗人だった。 「今日は俺と約束あるので……」 悪魔がニッコリ笑う。 お前とは約束してねぇ!二人で帰るとか嫌だ。きっと高校の時の事、からかわれるに違いない。 …………でも。口止めするチャンスか? 変な風にペラペラ話される前に。 仕方なく麗人に付いていく。 カフェから徒歩10分…… 連れ込まれたのは麗人のアパート。 「近いな……」 なんて切りだそうと考えていたら、景色が反転した。 ドサ…… イキナリ押し倒されて死ぬ程、驚いた。 「いっ!一体、なんのつもりだ!!」 近すぎる距離に思わずビビる。 「お前の泣きそうな顔、好きなんだ。」 …………は?なんだと? 「お前!ふざけんな!このドS!!」 真顔の麗人の胸ぐらを掴む。 「俺、Sじゃないよ。虐めたいの、お前だけだし。」 指にキスされて思わず固まる。 「は、離せ!」 慌てて振り払ったけど…… …………俺だけ? 意味を考えていたら、頬に手を添えられて麗人の顔が近付いた。

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