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第2話

ーー リーフ side ーー イーノを喜ばせるにはどうしたらいいか、考えて薄紅風鳥を狩った。美しい羽根と美味な肉。羽根は髪飾りにして肉は宿屋の食堂に持ち込んで料理してくれるよう頼んだ。 もっと大きな町なら洒落たレストランに連れて行っても良いがこの町にそんな店はない。だがこの宿屋の料理はなかなかだ。イーノはきっとこちらの料理の方が好きだろう、といつになく浮かれながら準備を済ませた。 「リーフ様! おはようございます!」 「イーノ、おはよう」 宿屋から出ればかわいいイーノが待っていた。待たせてしまっただろうか? 「その……嬉しくて早く目が覚めちゃって……」 「早起きは良い事だが、きちんと睡眠をとらないと……ほら、少し顔色が」 「お、お腹空いたので早く屋台に行きましょう!」 不用意に触れたせいか真っ赤になって背を向けるイーノ。ギクシャクしながら速足で歩き出した。 「ここ、美味しいんです!」 「よう、イーノ! はやいな…… って、エルフ様!? お前、エルフ様と知り合いだったのか?」 にっと得意げに笑うイーノに店主が薄いパンに生野菜と焼いた肉を挟んだ物を手渡した。 「代金だ」 「あ! 俺が払います!」 「誘ったのは私だ。今日は私に払わせてくれ」 「うちのは1つ4銅貨だから、2つで8銅貨、茶はサービスだよ」 「安いな」 「ふふふ、安くて美味くてボリュームたっぷり! がうちの自慢だ」 「それは良いな。いただこう」 「あ! おっちゃん、今日肉多い!」 「いつも通りだ」 「嘘だ!」 「減らすか?」 「いつも通りでした!」 イーノと店主の楽しげなやり取りを聞きながら食べる。ただの生野菜かと思ったがいくつかの香り野菜を混ぜて肉の脂っぽさを消しつつ、肉汁と絡んで濃厚な旨味を引き立てる。そして溢れる肉汁はこの薄いパンが吸い取るので手が汚れないのか。よく考えられている。 「美味しかった」 「良かった! じゃ、次はデザート!」 食事はこれで終わりなのか? 私はともかく、イーノはそれで足りるのか? ……足りなければ何か買って食べれば良いか。果物を売る屋台でピルムを購入して小さなナイフで8つに割り、硬い芯の部分を切り落として勧めてきた。 「甲斐甲斐しいな」 「そっ、そうですか? あ、やり過ぎた? 余計な事しましたか……?」 「イーノが無理をしているのでなければ嬉しいよ?」 こんなかわいい子に世話を焼かれるのは気分が良い。いたずらに一切れ口に運んでやると反射的に口を開いて受け入れた。やはり幼な子のようだ。指についた果汁をペロリと舐めて見せるとまた顔を朱に染めて固まった。 甘くみずみずしいピルムを半分ずつ食べてから畑に案内してもらった。 ーー イーノ side ーー 朝日を浴びるリーフ様。 ジューシーロールを食べるリーフ様。 ピルムを食べるリーフ様。 何をしても絵になるなんてエルフってすごい。 しかもしかも!! 『あーん』て! 『あーん』て!!! それに指を舐める仕草なんてぜったい俺へのサービスだ! もう死んでも良い! いや、まだまだリーフ様を見ていたい! 崇め奉りたい!! プラチナブロンドの長い髪は風の精霊の加護で常にふわふわと舞っている。切れ長なのに大きな翡翠の瞳。通った鼻筋に形の良い薄めの唇。長身で肌は抜けるように白く、手足は長く美しい。 夢心地で畑に案内して旬の野菜を見せていると、畑を貸してくれている農家の家族がリーフ様を見に来た。あ、みんなで拝んでる。その気持ち、分かるぞーーーー! 彼らは笑顔で優しく対応するリーフ様に山盛りの野菜を押し付けてぺこぺこしながら離れて行った。 ……遠巻きに見ているけど。 世話の仕方を説明しながら作業を終え、少し汗ばんだのでリュカを冷した滝に案内した。 「これ、俺が育てたリュカです! 冷やしておいたので良かったら食べて下さい!!」 「ひんやりして美味しそうだ。いつからここに?」 「今朝、早く起きちゃったので1番できのいいのを採って冷やしておいたんです」 「ふふふ……自信作なんだね。嬉しいよ。甘えても良いかな?」 「へ?」 「食べさせて?」 『あーん』なの!? 俺なんかがこの美しいエルフのリーフ様に『あーん』して良いの!? 「少し大きいから切って食べさせてくれるかな?」 「ははは、はひっ!!」 赤くて艶々した実を一口サイズに切って差し出すと、手首を掴まれてゆ、指を! 舐め……っ!? 何これナニコレなにコレ!? 舌使いがエロっ! 柔らかくてヌルヌルして……!! 勃っ……!! 「ごっ、ごめんなさいーーーっ!!」 俺はせっかくのデートだったのに走って逃げてしまった。 だって! リーフ様があんな! あんな事を! 見た目のエロさと指を舐められる感触で……感じて……勃っ……!! 俺のバカー!!サイテー!! もう、恥ずかしくてリーフ様に会えない〜〜〜!! 俺は家に駆け込み、着替えもせずにベッドに飛び込んで泣いた。

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