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第4話

ーー リーフ side ーー 指を舐めると涙を浮かべ、口づけすれば熱を出す。 これは手強い。 悪いが勝手に部屋を探し、熱を出して目を回したイーノをベッドに寝かせる。イーノの部屋と思われる方のベッドは狭かったので両親の物であろう2人用のベッドに横たえた。汗ばんだ体を拭いてやり、着替えを探してクロゼットを覗くが寝衣が見当たらない。仕方なくシャツと下着だけ着せた。身体は隅々まで極力丁寧に拭いた。どこもかしこも可愛らしかった。 熱で寝苦しそうではあるが病気ではないので一旦、宿に戻り事情を説明すると料理を届けてくれる事になった。野菜も調理してくれていて、私たちの分以外は宿に任せた。 届けられた料理は2人分としても多かったのでイーノの寝顔を見ながら夕食として一部食べる。匂いにつられて眠ったままよだれを垂らすイーノ……くっ!! 行商に出かけたという両親は1週間は帰って来ないらしいのでイーノの隣に滑り込む。こんなに可愛らしいのに男らしい香りもして、少々胸が高鳴る。熱は苦しいだろうがこの寝顔を見ながら眠れるのは幸せだ。 おやすみ、イーノ。 ーー イーノ side ーー 気づいたのは朝になってからだった。なぜか両親のベッドで、なぜか……リーフ様が添い寝していて。 柔らかな朝日にきらきら輝く淡い色の金髪とまつ毛と産毛。光の精霊と言われても疑わないだろう美しさだ。 「……ん……」 色っぽい声を出してゆっくりと目を開くとか…… 鼻血出そう……。 「おはようイーノ、熱は?」 「おはようございます。熱? 俺、熱出したんですか?」 「そうだ。熱を出して倒れたから勝手にここへ運んだよ。……まだ顔が赤いが大丈夫か?」 頬に触れるとますます赤くなり、また熱を出しそうに見えたので手を離し、少々距離をとった。 「もう1つの部屋はベッドが狭かったからこちらを使わせてもらったが」 「両親のベッドですけど大丈夫です! あ、夕飯は……?」 「食べられそう? 昨日の夕飯に食べようと思って宿の主人に頼んでおいた料理が届いているよ。一緒に食べよう」 「はい! ……え?」 ベッドから降りるとシャツとパンツだけ。しかもこれは袖がほつれてるから昨日着ていたやつじゃない。 「体を拭いて着替えさせた。勝手なことをして悪かったかな?」 「そんな事までさせてしまったんですか!?」 「イーノの世話を焼くのは予想外に楽しかったよ」 いい人すぎる!! 笑顔が眩しい!! 質素な家にゴージャスな存在が浮いている!! 「あ! 仕事!!」 「熱を出したから休むと昨日のうちに伝えておいたよ。私も明日には町を出るから……それまで共に過ごそう」 「はひっ!!」 あぁ、そうか。また行ってしまうのか。リーフ様は腕利きのソロ冒険者だもんな。そのリーフ様を独り占めできる時間……なんて贅沢な!! じっくり鑑賞させてもらおう。 「そうだ、私とパーティーを組もう。イーノに怪我なんてさせないから一緒に来てくれ」 「はい?」 「だからパー……「おれ、冒険者じゃありません!!」 「もちろん戦わせたりしないよ。でもずっとそばにいて欲しいんだ。だからギルドに登録してポーターとして付いて来て欲しい」 ポーター。つまり荷物運び。 それならできるかな? でもこの歳で今更……? ちらっ キラキラ ちらっ キラキラキラキラ 「お願いだ」 「喜んで!!」 はっ! 輝く笑顔を見て、手を握られて反射で承諾してしまった。 明日出発? 両親に連絡とか家の戸締りとか、とにかく家を離れる準備!! ギルド登録!! タバクさんに辞めるって言って…… 慌てているとリーフ様は明日出発するけど2週間後に迎えに来る事とギルド登録だけは今日一緒に行ってくれる事、旅暮らしになってしまう事を説明してくれた。 「家もあるにはあるのだが冒険者としてあちこちへ行くばかりで家に帰るのは僅かだ。それでは共に居られない」 「リーフ様、俺、喜んでお共します!」 そんな悲しそうな顔を見たら支えたくなるよな! もう惚れた弱み! いくらでも尽くします!! 着替えをして……と言うかズボンと靴を履いてギルドへ出かけた。 ーー リーフ side ーー 着替えさせられた事に恐縮しているが寒くないせいか脚を晒したままでいる。身体を拭いた時にも感じた事だが体毛が薄く、尻や太腿がすべすべで触り心地がとても良かった。それを眺めて居られるのは嬉しいので敢えて指摘はしない。 ポーターになる事も二つ返事で承諾してくれたから2人用のテントと寝具、カトラリーを用意しなくては。亜空間収納バッグも買おう。共有設定にして2人で使える亜空間収納。リュックならさぞ似合うだろう。 ……似合いそうな衣類も買おう。 野営で寝衣は不要だが家では必要だな。ご両親にも挨拶をして……これではまるで婚姻の準備のようではないか。 イーノを伴侶に? 伴侶として閨を共にするには少々純真過ぎるが時間はたっぷりある。ゆっくりと馴らして育てていくのは楽しそうだ。 熱を出させないよう気をつけよう。 決めた。 イーノが私の伴侶だ。

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