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第8話

ーー リーフ side ーー ふふっ…… イーノが胸に釘付けになっている。今日も可愛らしい。早く見慣れるんだよ? 「さぁ、支度をして食事に行こう」 通常、ガナドールの護衛中の食事はエスグリと交代だが今回は付きまとわれているだけだから勝手にする。イーノに説明だけはしないとな。 「イーノ、護衛は交代で依頼主の食事を見守るのだが今回、私は護衛から外れているので自由にしている。次に護衛を引き受けたらイーノと共に食事をする事が出来ないんだ」 「残念だけどそうですよね」 「だからこれからなるべく護衛は引き受けないつもりだ」 「アホか!!」 エスグリが話に割り込んできた。指名の依頼が多数あるのに、全部断るのか?と。 「これからは景色の良い所への採集や討伐を中心にするつもりだ」 「1人で中位魔獣を討伐するお前が? 物見遊山か!!」 「イーノを危険な目に合わせたくない」 「ポーターだろうが!」 うるさい。イーノが困ってるじゃないか。 「リーフ様、あの……」 「イーノが大丈夫そうなら徐々にレベルを上げていくからね。焦る事はない」 「……申し訳ないです」 部屋に戻って押し倒して撫で回したい! 抱き枕にしてずっと抱えていたい!! と言う気持ちは上手く隠せただろうか。 ーー イーノ side ーー 待遇が破格なのは分かってたけど、依頼まで制限させるなんて申し訳なくて後悔が募る。何とか早く通常の依頼を受けてもらえるように頑張らないと!! と、考えたんだが。 焦ってつまづいたり物を取り落としたり、些細な失敗の数々を披露する羽目になり、しばらく簡単な依頼しか受けない事の後押しをしてしまった。こんなはずでは……!! 「リーフ、オレもイーノが成長するまで付き合うよ」 「余計な世話だ」 「だってこいつ面白い」 「ひどい!」 「お邪魔虫です」 「安全第一だろ」 何だかんだと理由をつけて言いくるめられ、しばらくの間3人パーティーになる事が決まった。リーフ様ってば俺をダシにされると弱いんだよなぁ。……いつもじゃないよね? そしてガナドール様と別れる日、黒水晶の板は5枚しか記録できていなかった。 ガナドール様は100枚全て記録し終わるまで預けておく、と言った。と、言う事は99枚記録した所で封印すればずっと持っていられるんじゃないか? よし! もっと記録しよう♡ 「ここが私の家だ。小さいが我慢してくれ。イーノがもっと広い家が欲しいなら買い換える」 「それは結婚相手に言ってあげて下さい。……それで、俺はここに泊めてもらって良いんですか?」 「……そうだ。ここにはあまり帰って来れないかも知れないが、この町に来た時には宿ではなくここに泊まってくれ」 使用人もいるので宿と同じく掃除も洗濯も不要、帰ってきた初日だけは外食、風呂に入りたい時はそう言えば半刻かからず用意が整うと言う。 ダメ人間になりそうだ。 エスグリさんは馴染みの宿に泊まるそうで護衛依頼達成の報告をしたらそちらに行くようだ。俺とリーフ様はそれぞれお風呂で汗を流し、夕飯を食べに出かけた。 明るい。 夜なのに明るい!! 街には街灯があって一晩中明るいらしい。治安維持のために魔石灯は欠かせないと言う。納得だが小道や裏路地は真っ暗で正直、怖い。右も左も分からず、ただひたすら大人しくリーフ様について行った。 「リーフ様、ここ、高級店ですよね!?」 「ハーフエルフの料理長がエルフの里の料理を再現してくれているのです。イーノの口に合うと良いのですが」 俺の不安は通じていない。 断って恥をかかせる訳にもいかないのでついて行くが、居た堪れない! 個室に案内されたから他のお客さん達の様子は分からないけど。服はリーフ様から借りた上等な服だけど! 顔も中身も田舎者丸出しだよぉぉお! 料理を運んで来た給仕の人が俺の緊張に気づき、穏やかに微笑んでくれた。すみません、全然くつろげません。 「木の実と彩り野菜のサラダでございます」 「森の恵みのクリームスープでございます」 「花嫁衣装の山乙女でございます」 「美味の極み、ウマ鹿のステーキでございます」 「デザートは星降る夜の君の瞳でございます」 もう、何が何やら。 メニューは理解できなかったけどとにかく全てが美味しかった! デザートは翡翠色ならリーフ様の瞳の色なのに、何で地味な俺の色なの? 茶色って……。小さな飴が散りばめられてキラキラしてて、食べるとカリコリしてすごーく美味しかったけど。 緊張した割に味わえたなぁ。 「リーフ様、ごちそうさまでした。とっても美味しかったです」 「イーノの口にあって良かった」 「あの、ウマ鹿って初めて食べたのですが、どんな鹿ですか?」 「赤い毛並みの小型の鹿です。美味い鹿、で|美味鹿《うましか》です。あまりの美味しさに食べた者が呆ける事から馬鹿になる鹿だ、とも言われています」 本当に美味しかった。 柔らかくて癖がなくて、でも旨味はたっぷりで。肉質を柔らかくするために飼育されていて、野生のウマ鹿は硬いらしい。 エルフ達の大好物で里で飼育してる。……基本、門外不出。 この店は特別に卸してもらっていると言う。頑張って稼いでリーフ様にお返ししたいな。

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