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第28話

ーー イーノ side ーー 文字通りのおんぶに抱っこ……。 挙句に食事の用意まで。こんな事ではダメだ!! 癒してくれ、って言ってたな。 マッサージしたらいいかな? まだしたことないけど、あんな崖登ったんだからいくら身体強化しても疲れているはず! 食事が終わって一息ついたところで声をかけた。 「リーフ様、マッサージさせて下さい」 「マッサージ?」 「はい!」 両親の肩を揉むくらいしか経験はないが、マットにうつ伏せになってもらって脚を揉んだ。 「うん、なかなか気持ちいいな」 「そうですか!」 足の裏からふくらはぎ、腿、と徐々に進んだところで尻を揉むのは憚られた。 ……次は腕。 座ってもらって揉む。 細身なのに引き締まった筋肉の張りがかっこいい。両方の腕と肩を揉んだ。 「次は背中です。またうつ伏せになって下さい」 お願いして揉み始めたら何だかやりにくい。子供の頃、父の背中に乗って踏んだことを思い出したが大人になった現在の体重では気持ち良くないだろう。 何よりリーフ様を踏むなんて有り得ない!! 「失礼します」 思いついてリーフ様の上に跨った。膝立ちでいれば失礼にならない、と思う。 「あの、これ、失礼ですか?」 「……いや、気持ちいいし、嬉しいよ」 最初の間は? 本当は嫌なのに気を使わせちゃってるのかな? 少し不安に思いながら背中全体をマッサージして終わりにした。 ーー リーフ side ーー これは、なんとも……。 イーノが私に跨っている。 背負っている時より距離があるにもかかわらず、服越しに伝わる体温を強く意識してしまうのは、寛いでいるからか。 いい歳をして、この程度の触れ合いであらぬ所が反応するなど、悟られたくはない。マッサージが終わるまで、平常心を心がけながらイーノの手の感触を楽しんだ。 「ありがとう。おかげでとても癒された」 「良かったです。お世話になりっぱなしでは心苦しいので、なんでも言って下さい」 その言葉を利用して抱き枕になるよう頼んだが、いつもの事なので二つ返事だった。 馴染んできたな。 ─────────────────── いつものように私の胸を|弄《まさぐ》り、乳首を探す柔らかな手。崖に作られた横穴は結界で守られている、と言っても念のため服は着たままだ。 「イーノ、おはよう」 「ふぁ……っ、りーふ、しゃま。おはよぅ、ごじゃいままふ……」 慣れない環境をものともせず、熟睡できるのは才能か。 「ほら、目を覚まして。先に進むよ」 「さき……?」 寝ぼけてはいるが起き上がったので、茶を入れる。茶葉は1杯分に固めてあるので、カップに入れて湯を注ぐだけだ。 軽い朝食を食べて、崖登りを再開した。 今日は丸一日崖を上り、明日の昼には『孤高の大地』に着けるだろう。銀芙蓉が咲くまであと2日。 邪魔も入らず、3度の休憩を挟んで野営用の洞に着いた。 「今日はここで休む」 「はい! 食事の用意しますね!」 昨日とは違い、今日は元気だ。 運ばれることに慣れたのは、私への信頼が上がった気がして嬉しい。 リュックからマットや食器、食材を出して甲斐甲斐しく準備をするイーノを眺めながら、それなりに疲れている身体を休めた。 ーー イーノ side ーー 今日は昨日より動ける! 切り立った崖を苦もなく登るリーフ様はすごい! それに背中に密着させてもらってるといい匂いがして、こんな状況なのにリラックスしてしまう。昨日、あんなに怖かったのが嘘のようだ。 ……でも、荷物を運ぶべきポーターが荷物になって運ばれるって、おかしいよなぁ。これから成長しよう!! 干し肉入りのスープを作りながら、パンを切って野菜のマリネを出し、鳥肉のローストをスライスする。コクトゥーラ様が簡単に美味しく食べられる料理を考えてくれて、下ごしらえまでしてくれてるから、とてもありがたい。 コクトゥーラ様の味付けだからただでさえ美味しいのに、リーフ様と隣り合って食べると、ますます美味しい! あぁ、幸せ。 「リーフ様、マッサージしますね!」 「あぁ、頼もうか」 身体強化の魔法を使ってると聞いてるけど、やっぱりそれなりに筋肉が張っている気がする。心を込めてじっくりと揉み解す。 ……お尻、揉んだらダメだよな。 でもマッサージだし。 良いかな? いやいやいやっ!! こんな所でいやらしい気持ちになったら困るから!! ダメだなぁ。 ここに来る前、ほぼ毎朝触ってもらってたからか、たった2日、間を開けただけでムラムラしはじめてる。前は週1で充分だったのに。 細身なのにしっかり筋肉のついた肉体美を思い出し、なぜかあらぬ所が疼く。記憶にないけどがっつり致してしまったようだから、身体が快楽を憶えているのか。 初めてを憶えていないのは、少し残念だけど、あの状況では仕方ないよなぁ。 ……こんなおっさんでも、本当にまた抱いてもらえるかな? 今度こそ憶えていて、一生の思い出にするのに。 帰りにあの植物のそばを通るとき、リーフ様の予想が外れてまた種を植えつけられたら……? 心配してくれてるリーフ様には悪いけど、変な期待をしてしまうのは許してほしい。

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