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第2話

 見たことのない芳紀の少年が珍しそうに幸を見上げていた。幸よりはずっと低くて未成熟だったが細長い容姿をしていた。肌は浅黒くて、髪は少し色が薄い黒。肩に届くくらいの長さだったけど、涼しげに梳いてあるから長いとは感じない。短髪なのに優雅で、だけどやんちゃな感じがした。  これだけだったらまあワンチャンそこらへんにいるティーンかな、って思えたんだけど、瞳が一度見たら忘れられないくらい魅力と迫力があった。色は蒼穹のように広大で深い青。宇宙の入り口だと漠然と畏怖するような色だった。その瞳が太陽の光を反射すると七色に一瞬輝く。夏にも関わらず薄手の真っ白なフードつきのブルゾンを羽織っていた。レインコートにも見える。  雰囲気が普通じゃない。  幸は少しの間驚いていたけれど、とりあえず靴底で煙草の火を消して、答えを待っている少年に言った。 「心地よかったからね」  笑っているつもりはなかったけど、笑っているように見えたのだとしたら多分そういう感じなんだろう。自分でも分からない。 「夕立が好きなの?」  宇宙色の少年の熱い視線を感じる。試すような、心配するような、熱のある瞳だった。 「まあ好きだね」  考えごとがはかどるしね。 「そんな人もいるんだ。みんな雨が降ると外からいなくなるから」 「別に雨が嫌いってわけじゃないと思うけど。みんなしてるからそうしてるだけで」 「どういうこと?」 「みんなと同じことするのは容易いからね」 「あなたって変なお兄さんだね」 「キミも変な男の子だね」  そうは言っても、歳は五つとは離れていないんじゃないかと幸は思った。幸は歳の割には大人びてみえるし、この少年は歳の割には子どもっぽい。

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