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第3話

「お兄さんはみんなと同じことをしたくないからここに一人でいるわけ?」  幸は横で二割くらい声変わりしている刹那的な音でぴーちくぱーちく言っている少年の声に耳を傾けながら空を仰いだ。  辺りは明るくなり始めていた。今にも暴力的な湿度が陽炎のように地面から立ち上ってくる。  そういうわけではないけれど、と少年の言葉を咀嚼する。  自分のしたいことを探しているだけ。そしてそれを忠実になぞろうとしているだけ。 「もうすぐ分かるよ」  なにが、という少年の言葉を聞き流して空を見上げた。  太陽の角度からして、今この場所が塩梅がいいはずだ。 「ほらね」  指差した先に雨の弓。  七色のアーチ。すごくはっきり見える。  人間に生まれてよかった、って思う。 「お兄さんこの街の人じゃないでしょ」  なんの感嘆も漏らさずに少年が言う。  幸はあんまりしたくなかったけど、空から目を逸らして少年を見た。彼は幸を真っ直ぐ見やって続けた。 「この街の人間は空なんて見ないよ」  笑ってごまかす。言うの面倒くさかったから。  少年が一歩幸に近付く。瞳をきらきら輝かせて。こんな眩しい瞳を見るのはいつぶりだろう。

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