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唯一神勝
「ね、行こうよ。楽しみだね」
有紀はうっすらと微笑みを浮かべるが、猛者がやって来て喜んでいる強者のオーラが漂っていた。心なしか顔立ちが彫刻のように濃く見えるのだから不思議。
「う、うん」
「大丈夫だよ。オメガだからオメガには優しいから」
『それが不安なんだ』と思っても立場上そんな事言えるわけがない。
ただ、この恐怖の対面をどう難なくこなすか僕は考える事に精一杯だった。
「それでは紹介します。転校生の唯一神勝くんだ」
黒板に名前を書きながら転校生の紹介を担任の教師は始めるが、肝心の転校生は教室にいない。
なんだろうこの世紀末猛者感が漂う名前は。ひれ伏してしまいたくなるような名前に僕の恐怖のボルテージは上がっていく。
絶対に気が付かれませんように!
「あ、言い忘れたけど。とても、シャイだからみんな優しく接するように」
しかし、担任の教師からとんでもない名前と共に出てきた単語は、名前の世紀末猛者感を打ち消すものだ。
絶対に嘘だ!教師も僕を騙そうとしている。そして、殺すつもりなんだ!
もはや誰が何を言おうとも僕は疑心暗鬼になっていた。だって怖いんだもん。
「勝くん。恥ずかしがらないで早く入ってきなさい」
そう言うと控えめな音をたてて教室の扉が開いた。
そこにいたのは紛れもない世紀末猛者オメガだった。
浅黒い肌にギリシャ彫刻のような、くっきりとした目鼻立ち。
メロンパンを取り付けたような逞しい肩。グラビアアイドルに負けない小振りのスイカのような大きな胸。そして、ブリン!と弾力に富んだ大きなお尻。
もう、どう頑張ったって僕は殺される。
もしも、それで助かるのならペニスと睾丸をここ切り取って捧げてもいいくらいだ。
「うっ!」
「勝くん?!」
そんな彼が頬を赤らめてその場に座り込む。その刹那。ブワッと熟れた果実のような匂いが教室に漂った。
「ヒートだ!」
有紀が慌てたように言うと、それに呼応するように僕の身体に異変を感じた。
なんだ?この感覚。
まるで、燃えたぎるマグマのように身体が一気に熱くなる。
「ここにアルファがいる!さがせ!ラットを起こしているぞ!見つけ出して殺せ!」
オメガの何人かは僕の身体の変化にすぐに気がついたようだ。アルファを血祭りに上げようと、クラス中を見回し始める。
その目はハンターのそれで、僕はアルファ狩りが始まったのだと悟る。
気分は狼に喉元を噛みきられる寸前の羊だ。
「あ、あぁ」
これが、ラットなのか。
身の危険をわかっていても到底抑える事などできないものだ。マグマが身体の中を食い破るような苦しみ。
「優くん?」
有紀はすぐに気がついたようで、驚愕の表情で僕を見ていた。
騙してごめん。
「おい。うぬはアルファか?」
ふいに声をかけられ顔を上げると。僕の目の前に立っていたのは勝だ。年貢の納め時というやつなのだろう。ここで、正体がバレてしまえば死しかない。
諦めの気持ちが少しだけ出てきた。ラットを抑えられないアルファは殺されても仕方ない。
狂暴になったアルファに襲われたオメガはどれだけ苦しんできたのだろう。
ふと、そんな事を僕は考える。
「おい……!」
僕の顔を覗きこむのは、憤怒のように顔を歪ませて、真っ赤にさせた世紀末猛者。やっぱり怖い。
「はひぃいいぃ!」
僕は恐怖でラットが急激に収まっていくのを感じた。
「ひぃいぃいいい!!!!」
奇声をあげながら、僕は机を吹っ飛ばしてその場で勝に土下座した。
「お許しくださいぃぃ。僕は安全なアルファです!貴方のような魅力的なオメガを襲うような事は絶対にいたしません!僕は貴方に身も心も捧げます。どうか、どうか命だけは奪わないでください!」
咄嗟にハサミをペンケースから取り出して、ズボンを引き下げようとベルトに手をかける。
ペニスと睾丸を捧げれば命は助かるはずだ!間違いない。
「こい……!」
勝は僕の首根っこをひょいと掴み上げ、所謂お姫様抱っこをして。クラスメイトが残像に見えるようなスピードで教室から出た。
『こ、殺される!助けて!』
世紀末猛者にお姫様だっこをされている状態で、廊下を走るなんて僕の人生史上最大級の意味不明さだ。こんなの現実じゃない。きっと夢だ。
「二人きりになれる場所は?」
あぁ、何て良い声なんだろう。
世紀末猛者勝は重低音ボォイスで僕に囁かれると、腰から力が抜けると同時に、現実だという実感が湧いてくる。
でも、どうしよう。二人きりになったら性器を切り取られるどころか、首すら切り取られそう。
「早く言え!」
顔を真っ赤にさせて叫ぶ姿は、僕への怒りよりも苦しんでいるように見える。
「ほ、保健室なら」
「案内しろ」
「は、はい」
何をされるのか恐怖しかなかったが、僕は勝を保健室へと案内した。
「フグッ!」
僕はベッドに投げ捨てられ。瀕死寸前のアヒルのような声を上げる。
ち、ちょっとだけ痛い。
「うぬは、身も心も捧げると言ったな?」
「は、ひぃぃいいぃぃ」
恐れていた事を勝に聞かれて、僕は返事と悲鳴が合体した奇声を上げる。
「俺を抱け」
「は、ひいぃいいいいぃぃぃいい!!!?」
そう言うなり勝はズボンとパンツを一気に引き下げる。パンツは可愛いレースつきのハート柄だ。
意外と下着に頓着しない主義なのかもしれない。
ボロンと飛び出たそれはビンッと張り詰め、先走りを出していた。
「うぬも脱げ!」
突然、ビリビリッと音をたて勝に服は全て破かれた。さようなら。僕の服。
ところで全裸でどうやって帰れば良いんだろう。
いや、殺されるから関係ないのかもしれない。
「なんということだ」
「っ……」
マジマジと見られると恥ずかしい。僕のペニスはコンプレックスの塊でしかない。
それは天井に向かい硬度を保ちながら、勃起を継続させ、この一連の騒ぎの中でも萎えていなかった。
本当はなるべく考えないようにしていただけだった。
実は性器を剥出しにした勝を見ただけでも、全身の血液が沸騰しそうなくらい身体が熱い。
「その見た目でそれはあんまりじゃないか?」
「え?」
「ここまで大きすぎるとグロテスクだぞ」
「そ、そんな事」
「なんという不平等。しかし、もう、我慢できない」
勝は真っ赤な舌を伸ばして、僕のペニスをチロリと舐めた。
「あぁ」
「俺の、も、舐め、ろ。触っれ」
顔を真っ赤にさせた勝は息苦しそうに僕を見る。
横寝の互いの性器を触り合える体勢で、彼のペニスを右手で包み込むと、先端からは白濁液があふれでていた。
「こっちも」
勝は懇願するように後孔に指を入れ、中を引き伸ばして僕に見せる。そこは先程見せた舌以上に赤く充血し、熟した果実のように愛液を滴らせていた。
言われるままにそこに指を引き入れると、もどかしそうに腰をくねらせ「あぁ」と、甘い声をあげた。
「かきまぜて」
言われるままにかき混ぜると、グチュリと音をたてて中が収斂する。
「あぁ、あ、」
「あっ、あぁ」
勝は僕のペニスへの愛撫を忘れて、上手ではない僕の愛撫に何度も身を捩らせる。
「もう、いい」
「えっ?」
勝は僕の上に跨がると、うっすらと両目に涙を浮かべて。後孔に入れようと僕のペニスに手を添える。
ゴクリと唾を飲みこみ、ゆっくりと腰を落としていく。
そこは握り潰した果実のように、ジュクジュクに濡れて柔らかく僕のペニスを包みキツく締め付けていく。
「んっ。あっ」
局部に痺れるような心地よさに、僕は身体を強張らせて声を出すと。勝の唇は弧を描くように歪んだ。
そして、腰を浮かせて、ゆっくりと僕のペニスを飲み込んでいく。その表情にはもう理性はない。そして、僕も理性を捨て去った。
「あぁ」
「っあ」
グチュグチュと水音が響く保健室の中で、勝を背後から貫きながら、僕はそれしか出来ない機械のように何度も何度も腰を打ち付けた。
「お、おい!俺を番にしろ」
ふいに聞こえてきた言葉はそれで。僕はその声に誘われるように、勝のうなじに噛みつく。
そして、僕達は番戦争に勝ち抜いた。
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