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⑤16歳。はじまりは突然で…。
「お母さん。これ、なに?」
満面の笑みを浮かべる母さんに花音が尋ねたその声音はいつもよりずっと低かった。
黒のスーツとフリフリの純白ワンピース。
このふたつを目にしただけでも嫌な予感しかしない。
「やあね~、見ればわかるでしょう? 礼服よ!!」
……礼服?
「なんのための?」
「なにするの?」
今度は俺と花音の声がダブった。
さすがは双子だ。息もぴったりだな。
――って、感心している場合じゃない!!
俺はキョトンとしている母さんと父さんを交互に見つめた。
「…………」
しばらくの沈黙がリビングを漂う。
その中で、『当然でしょう?』と胸張って答えた母さん。
父さんが続く。
「そりゃアレだよ、花音。お前の婚姻相手の……」
「っはあああああっ?」
「はあっ?」
父さんの言葉を遮ったのは、むろん言うまでもなく花音と俺。
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