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③水も滴るーーいい男?
双子だからしょうがないとは思うけれど、それでも俺は男で花音は女だ!!
年頃の男子がワンピースを着ても違和感がないとか有り得ないだろう?
ああっ、もう。
俺はなんでこんな厄介な役割を引き受けてしまったんだろう。
ひとりダメージを受けている俺の脳裏に浮かぶのは1週間前の出来事だ。
――誕生日のあの日。
結局俺は3人に言いくるめられ、花音と入れ替わることになってしまった。
うう、さらば俺の人権。
誕生日のあの日、当然、俺は花音になることを拒否した。
それはそれは、引き千切れるかもしれないというほどに首を横に振り続けた。
だが、父さんと母さんのある言葉で、俺の決意は揺らいだんだ。
『亜瑠兎が好きなものを何でも買ってやる』という、たったそれだけの言葉で――。
ああ、そうさ。
父さんと母さんの口車に乗せられて俺はついつい頷 いてしまったんだ。
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