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⑮16歳。はじまりは突然で…。
だいたい、祖父さんの命の恩人にそういうことやっていいわけ?
「大丈夫、大丈夫。絶対に亜瑠兎が男だって、バレないから。だってほら、自分の顔を鏡でちゃんと見てみな?」
花音は自信満々で持っていた手鏡をかざしてきた。
鏡に写っているのは、花音とほとんど同じつくりをした俺の顔だ。
「長いまつげに、すっきりとした目鼻立ち。日焼け知らずの白い肌に、黒い真珠のような肩まである髪。
この、ほっそりとした体は、あたしの服だってきちんと袖を通すわよ? ほら、何も言うことないじゃない」
ああ、本当だ。
俺って綺麗……。
じゃ、なあああああいっ!!
「何が、『ほら、何も言うことないじゃない』だっ!! 言うことありまくるわっ!! 3人ともふざけんなよっ!!」
――誕生日のその日。
本来ならば喜ばしい一日を――だけど俺は喜べるわけがなく、俺の怒号が家中に響き渡っていたのは言うまでもない。
――第一話・16歳。はじまりは突然で…。・完――
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