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⑥水も滴るーーいい男?
頑固そうな一文字に引き結んだ口元。
肩までの黒髪の中に、一筋の白髪がところどころ入っている。
その白髪がさらに華道家当主としての威厳を漂わせている。
次に入室してきたのは奥さんだろうか。
彼女は俺の母さんとは比べ物にならないくらい、とても綺麗な女性だった。
白地にところどころ赤が混じった着物を身にまとい、銀色の帯は派手だと思われがちなのに華やかで品がある。
それはきっと彼女の性格そのものが現れているのだろう。
『服は着るもので着られるものではない』
昔、祖父さんがそう言っていたことを思い出す。
――そして彼が最後の人物になるだろう。
葉桜家嫡男、月夜が姿を現した。
こちらにやってくる足音はとても静かで、けれどどこかしっかりとしたものだった。
彼は父親と同じ黒の袴姿で、俺より頭ひとつ分くらい背が高い。
えっと、俺の身長が163センチだから……多分月夜は180そこいらだろう。
俺の視線と彼の視線が重なり合えば――。
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