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⑪水も滴るーーいい男?

 そして嘉門さんは続けた。 「――とはいえ、花音さんには次期当主になる月夜を支えてくれなければどうにもならない。 そこで、どうでしょうか。彼女には1年間、月夜と世帯(しょたい)を共にし、許婚を解消するか否かは本人たちが決める、というのは――」  嘉門さんは、自分の息子である月夜の一生が決まるといってもおかしくない事柄を、まるで事務的なものでもこなすかのようにそう言った。 「そうですね」  父さんは嘉門さんの言葉に(うなず)いた。  父さんにいたっては……たぶん、娘を遺書通りに対面させなくてよかったなどと、内心安堵しているに違いない。  まあ、月夜は見るからに清楚そうな優しい人だと思うけれど、もしかしたら万が一っていう可能性もある。  何かの間違いでお腹に赤ちゃんが……ってなことにでもなったら大変だ。

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