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⑬水も滴るーーいい男?
……あ、しまった。
ついつい地が出てしまったけれど、もう遅かったり……。
――まあ、別にいいか。
どうせこの縁談は放棄するつもりなんだ。
相手に嫌われることこそ意味がある。
結果オーライだ。
この調子でぶち壊してやるぜ!!
俺が開き直ると、クスリと笑い声が聞こえた。
声の出所をちらりと覗き見れば――やっぱり月夜だった。
彼は口元に拳をつくって、笑うのを堪えている様子だ。
肩が小刻みに震えているからすぐにわかった。
……俺、そんなに面白いことは言ってないのに……。
目の前にいる月夜をじっとりと睨んでみせれば、彼は口元に当てていた拳を膝の上に置き、今度はにっこり微笑んできた。
……ドクンッ。
「……っつ!」
そうしたら、俺の心臓がまたひとつ大きく鼓動した。
俺……なんだよ。さっきからものすごくおかしい。
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