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⑱水も滴るーーいい男?
「や、月夜さんが謝ることじゃ!!」
俺は噛みしめた唇を解き、慌ててうつむけていた顔を上げ、首を振る。
すると悲しそうに微笑む彼が目に入った。
そしたら、なんといえばいいのか……。
彼を守ってあげたいと、そう思ったんだ。
男に対して守るとか意味がわからない。
……ああ、アレかもしれない。
弟が兄貴を慕うみたいな、あんな感じ?
ああ、きっとそうだ。
内心、うんうんと頷く俺。
「ありがとう」
眉をハの字にして悲しそうに微笑む月夜の顔は、憂いに満ちていた。
この人……きっと嘉門さんには毎日こうして押さえつけられているのかもしれない。
そう思えば、なんだか親近感がわいてくる。
こういう経緯でなければ、きっと親しい友人になれたに違いない。
純粋にそう思った。
「あ、庭見ました? 錦鯉が泳いでるんですよ。見てみません?」
どうして俺はこんなことを言ったのだろう。
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