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⑳水も滴るーーいい男?
「大丈夫? 怪我は?」
――あれ?
大きな音と共に畳に倒れたはずの俺。
――それなのに、いったいどうしたことか。
覚悟していたほどの衝撃がない。
俺を心配する優しい声の方へと目線を上げれば、眉根を寄せて俺を見つめる月夜の顔が間近にあった。
彼の両手が俺の腰に回っている。
どうやら俺を受け止めてくれたらしい。
……へぇ、月夜って細いのに俺を受け止めるなんて結構力があるんだ。
儚いっていうのは雰囲気だけなのか……。
「…………」
……って、何を考えているんだよ俺!
「へいきです!! 庭、行きましょう庭っ!!」
恥ずかしくて月夜を押しのける。
再び膝に力を入れると――。
また、足に力が入らなくなった。
畳に両手をつく。
「…………………」
……恥ずかしい。
一度ならず二度までも、他人に失態を見せるなんて!!
穴があったら入りたい。
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