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㉕水も滴るーーいい男?
覚悟して目をつむり、やがて冷たくなるだろう体を両手で包み込んだ。
「…………」
「…………」
だけど……あれ?
いくら待っても体は冷たくならない。
――しかもなんだろう。
妙にあたたかい?
池ポチャするはずの俺の体は、『冷たい』じゃなくて、『あたたかい』?
さっぱり意味がわからない。
今起こっている事実がいったい何なのかを見極めるべく、つむっていた目をゆっくり開けてみる。
すると目の前にはやわらかい黒の布地があった。
視線をゆっくり上に這わせれば、着物の襟元が見える。
さらに上へと辿る。
象牙色の肌に喉仏 。
すっきりとした顎のラインに緩やかに微笑む口元。
高い鼻梁。
花音に扮装 している俺の姿を写し出す、やわらかな茶色の瞳。
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