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④同意を求められて
たしかに、『可愛い』や『綺麗』などと言われるのは今に始まった事じゃない。
クラスの連中や花音の友達に言われるのはしょっちゅうだ。
相手からしてみれば誉め言葉だろうが、俺はそうじゃない。
聞き慣れるなんて有り得ない。
言われるその度に腹を立てていた。
それなのに、なんでだろう。
俺にとっての禁句は、月夜が相手だとそうじゃない。
前までは、『綺麗』とか『可愛い』と言われるその度に悲しくなって、その度に腹が立って仕方なかったのに……。
胸のジクジクする痛みはいつの間にか消えている。
その代わりにやって来たのは言いようのない熱――。
池ポチャして寒いはずなのに、体がかあっと熱くなる。
俺………………おかしい。
今日の俺はヘンだ。
マジで風邪ひいたかな。
顔だってなんか火照ってくるし――。
戸惑いを隠せない俺は、月夜の綺麗な瞳から逃げた。
視線を外し、畳へと滑らせる。
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