47 / 305
⑤同意を求められて
「あ、ひとつ。言おうとしていたんだ」
すると突然、月夜は思い出したかのように声を上げた。
「?」
言おうとしていたこと?
なんだろう。
視線はそのままで、耳だけを傾ける。
「同い年なんだから敬語は抜きにしてほしい」
ふ~ん、敬語なしでいいんだ。
「だったら月夜も、『さん』づけを止めてくれ」
俺は視線を畳から月夜へと戻した。
二重の目が大きく開いている。
さすがに華道家である次期当主に向かって、突然の呼び捨てはマズったかな。
月夜の顔色が気になって、俺は様子を窺 った。
……って、だから、いいんだよこれで。
幻滅されて、『許婚の件はなかったことに……』って言わることこそが俺の理想だろう?
すべては……そうだ!!
父さんに好きなものを買って貰うためだ!!
さて、何を買って貰おうかな。
タブレット型のパソコンとかでもいいよな。
ともだちにシェアしよう!