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⑧嫁? 夫? 同居生活のはじまり
だから、『女じゃない』と言えない俺は、月夜の好意を素直に受け取るしかない。
「部屋はキッチンと繋がったここと同じ造りの部屋があるんだけど……。問題は寝室だ」
珍しく、月夜は顔を曇らせ、開いた口を閉ざした。
彼はとても言いにくそうにしている。
「…………寝室?」
いったい何だろう。
月夜が問題だという隣の部屋へと移動した。
俺の後ろから月夜がついてくる。
引き戸を開けて中へと入ると、ダブルベッドがひとつ。
そこにあるだけだった。
これは……。
ふたり仲良くここで寝ろということなのだろうか……。
たしか、月夜の父親の嘉門 さんは、『間違いがないよう見守るつもり』だとか言ってなかったか?
だったら、この待遇はあまりにもおかしい。
まるで俺と月夜の間に間違いがあってほしいと言っているようなものじゃないか?
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