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⑯嫁? 夫? 同居生活のはじまり
だから月夜は自分を素直に表現するってことを許されないんだろう。
そんなことも気づかず、俺ってば最悪だ。
ドジを踏んだのは自分なのに、月夜に八つ当たりをしてしまった。
「…………ごめん」
「え?」
罪悪感にさいなまれながら、だけどやっぱり素直になれなくて、そっぽを向いたまま小さな声で謝る俺。
「わたしの方が無神経だった……ごめん」
相手の立場になって考えていなかった。
俺ってばいっつもこう。
思いのまま口にして、感情のまま動いて――。
指摘されてはじめて気づくんだ。
カクンと頭を下げて謝れば――。
「花音……やはり、可愛いね」
月夜の優しい声音が静寂を破った。
『可愛い』
それはいったい何度目だろう。
初対面からずっと言われ続けている言葉。
それなのに、今までの『可愛い』とは違う響きのように聞こえた。
違うってなんだろう。
わからない。
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