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⑤似た者同士
さっきの言葉から推測するに、『話を聞くからこっちに来い』
そう言っているのだろう。
べつに、さ。
髪なんて放っておけば乾く。
気にする必要なんてない。
俺は無言で月夜を睨 む。
「……………………」
「……………………」
だけど月夜は笑顔で見つめてくるばかりだ。
長い沈黙が続く。
「はあああああ…………」
深いため息をついてその沈黙を破ったのは俺だった。
やっぱり月夜は頑固だ。
彼は無言で足を開き、俺を待ち構えている。
仕方ない。
観念した俺は月夜が座っている前に腰を下ろした。
クスリと笑う月夜の声が耳に入る……。
「せっかく綺麗な髪をしているのにもったいない……」
そう言うと、月夜はドライヤーのスイッチをオンにした。
あたたかい風が俺の髪をすり抜け、首にあたる。
髪を梳 いてくれているらしい。
やわらかいクシの先が頭皮を刺激してくる。
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