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⑩似た者同士

「おやすみ」  俺は、すでに眠っている月夜にそっと告げる。  目をつむれば、目の前にいる月夜の心音が聞こえてくる。  トクン……トクン。  月夜の規則正しい心音を聴きながら、俺はふと思う。  こんな同居生活も悪くはないかもしれない――と。  初めはとても嫌だったが、これはこれで面白いんじゃないか。  なぜかそう思えてくる自分がいる。  月夜といると腹が立つこともある。  だけどそれだけじゃない。  なぜか心が安らぐんだ。 「ヘンなの」  薄闇の中――ぽつんと漏らした自分の言葉に、俺は苦笑した。  ー第五話・似た者同士・完ー

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