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⑩放課後は大波乱!
いったい何回、月夜の名前を呼んだだろう。
そうしたら――。
「何をしている!!」
突如ドアが開く音がして、そうかと思えば視界が明るくなったんだ。
もう一度、オレンジ色の陽光が倉庫の中に差し込んでくる。
――同時に凛とした男子の声が聞こえた。
この声は知っている。
月夜だ。
突然開け放たれたドアの方から聞こえた声で、男子たちの手が俺から離れた。
その隙に、俺は壁際へと移動する。
体は――だめだ。それ以上は足が竦んで動けない。
「花音!! お前たち……」
月夜の表情は逆光で見えないが、声がとても怒っているようだ。
常に穏やかな印象だった月夜はまるで別人だ。
声はいつにも増して低い。
今にも殴りかかりそうなほどの気迫をしている。
今の月夜ならきっと3人を一度に相手しても負けない気がする。
だけど――。
でもさ。
だめだ、月夜。
こいつらを殴ったりなんかしたら、月夜の立場が悪くなる!
動け、俺の足!!
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