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⑫放課後は大波乱!
……シンと静まりかえった空間。
ふたたび静寂が倉庫内に戻る。
「怪我は? ……何も……されてない?」
月夜は、俺の顔色を窺うため覗き込んでくる。
雰囲気はいつものように優しく、穏やかだ。
そこにはもう、怒りは感じられない。
……なぜだろう。
月夜の……この穏やかな声を聴くだけで、目頭が熱くなる。
泣きたくなるんだ。
「へいき……。ただ………」
「ただ?」
俺は一度口を閉ざし、壁の側に落ちている解かれた赤いリボンを見つめた。
そしてまた口を開く。
「月夜が結んでくれたリボン……はずされた……」
なぜだろう。
俺が男だとバレて嘉門 さんから訴えられ、一家が路頭に迷うとか……。
同性に襲われそうになったとか。
そんなことよりもリボンが解かれたことが……。
俺の中で一番悲しくて苦しい出来事になっていたんだ。
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