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⑬放課後は大波乱!
「……まったく……君は。リボンなんていつでも結んであげるよ」
『無事でよかった』
月夜は耳元でそう言った。
俺の体があたたかい体温に包まれる。
だから月夜に抱きしめられたんだってわかった。
そしたらさ……俺の心の中に溜まっていた悲しみが一気に溢れた。
「……怖かった……」
男だとバレることが――。
詐欺だと訴えられることが――。
一家全員が路頭に迷うことが――。
――そして……。
俺のせいで月夜の名誉が傷つくことが――。
怖かったんだ。
「怖かった……」
もう一回言った俺の声は震えている。
今までに出したことのない声色だ。
俺の声なのに、俺のものじゃないみたいだ。
「もう大丈夫だ」
そう言った月夜の手が、俺の腰にまわる。
恐怖で冷えきった体があたたかな腕によって包まれた。
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