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⑦眠れない!
ズキッ。
『月夜と離れる』
思い浮かんだ言葉で、また胸が痛くなった。
また、涙が一筋流れていく……。
……俺……。
月夜のこと……。
――嘘だろう?
いや、そんなハズはない。
だって俺は男だぞ?
月夜とは同性だ。
そんなの有り得ない。
「花音?」
「……っつ!」
ズキッ。
月夜が偽りの俺の名を心配そうに呼ぶ。
『俺』じゃない、妹の名前――。
俺は花音じゃない。
違うと言いたい。
だけど言えない。
胸がズキズキする。
苦しい。
|亜瑠兎《あると》って呼んでほしい。
そう思うのは――。
ああ、これで決定だ。
俺は……。
俺は月夜のことが好きなんだ。
いったい、いつから好きになったんだろう。
たぶん、月夜と初めて会った時からだ。
長時間にわたる慣れない正座でコケた俺を笑い飛ばさなかったこと。
池に入りそうになって受け止めてくれた時――。
まあ、結局最後は池ポチャしたけど……。
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