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⑫眠れない!
「花音、目を逸 らさないで。俺は深く傷ついているんだよ? 君が苦しそうにしているのに、何も話してくれないじゃないか。俺はそんなに役立たずなのかな? 頼りない?」
「違う! そうじゃない!!」
もう隠せない。
心配してくれる月夜から逃げられない。
俺はとうとう観念して、口を開いた。
「頼りないとかじゃなくて――。今日の放課後のこと……思い出して怖くなったんだ。目を閉じたら奴らの笑い声が聞こえるし……。ボタン……引き千切られる音とか……リボンが解かれるところとか」
「だったら、なおのこと……言ってくれればっ――」
「心配っ! かけたくなかったんだよ! 悪かったな!!」
俺は月夜の言葉をさえぎり、話を続けた。
……むうう。
なんかその言い方、責められてるみたいで腹立つぞ?
こっちはこっちで必死に月夜に迷惑かけないように頑張ってるっていうのにさ……。
俺は頬を膨らませて月夜に抗議した。
本心を口にすると恥ずかしい。
だって月夜のこと、すごく大事に想ってるみたいじゃないか!
いや、月夜を好きな時点で大切に想ってるのは間違いじゃないけどさ。
でもフェアじゃない。
今でも月夜は涼しい顔してるし。
俺はきっと、顔が真っ赤なんだろうな……。
だって、体中がこんなに熱い。
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