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⑮眠れない!
俺は両耳を塞ぎ、視線を泳がせた。
だけどどうしたって月夜のことが気になるわけで……。
簡単に月夜の声を聞き取ってしまう。
そんな自分が呪わしい。
「う~ん、その仕草もやめてほしい……かな」
じゃあ、どうしろって言うんだよ!!
腹立つし!
ムカついて月夜を睨んでも……。
「それも逆効果だよ?」
彼は静かに笑いながら、そう言った。
「だあああああっ、もう月夜うるさい! 知らないっ! もう寝るっ!!」
ガバッ!
俺は上掛け布団を頭からすっぽり被った。
なんなんだよ。
俺、すっごく怒ってるってのにさ……。
背中から、クスクスと笑う月夜の声が聞こえるんだ。
だけどその笑い声は腹が立たなくて、逆に俺を深い眠りへと誘う子守唄のようになっていた。
さっき月夜と重ねた口をなぞってみる。
……どうしよう。
ドキドキする。
そのまま背中を向けていると、掛け布団越しから俺の体が包み込まれた。
きっと月夜だ。
気がつけば、放課後に起きたことも忘れている。
あるのはあたたかい月夜の腕と、心地好いクスクスと笑う優しい声だけだった。
《第八話・眠れない! /完》
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