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⑥良くも悪くもドキドキ。
「あ、きた」
山本は、ホラと指さしてそう言った。
「?」
意味もわからず、名岸と山本ふたりの視線を追えば……。
同学年だろうか、ひとりの女子が恥ずかしそうに、教室の出入り口から顔を覗かせていた。
指名された月夜は、女子と何やら話し込んでいる。
「あの子、葉桜くん目当てだよ」
名岸が口を開いた。
「アンタっていう許婚がいるってのにね、知っていても諦められないっていう子、多いんだよ」
山本は名岸に続いてそう言った。
……なんだよそれ。
入り口で女子と話している月夜は笑っている。
優しい笑顔だった。
その光景を見た瞬間、俺の胸がジクジクしはじめる。
月夜と話している女子は背が低い。
毛先がクルっと巻いている。
目も大きくて……。
守ってあげたくなるような……とても可愛い感じのふわふわした子だった。
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