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⑦良くも悪くもドキドキ。
「べっ、別に……いいんじゃない? モテるのは悪いことじゃないし……」
ジクジクする。
胸が痛い。
だけど俺は無視をして、強がりを言ってみた。
――いやだ。
本当は……俺以外に優しい笑顔を向けないでほしい。
でも恥ずかしくて素直に自分の気持ちが言えない。
俺は仲良く話す月夜と女子から無理やり顔を逸 らした。
「ふ~ん」
俺の発言を信じていない山本が、じと目で見てくる。
「なに?」
見透かされたような目に、ドキっとしてしまう。
「別に……いいけどね」
チクチクチクチク。
あううう……。
山本の視線が痛いです。
「それで昨日はやっぱり迷った?」
皆まで言うまい。
山本は胸を痛める俺の心情を知っている様子で話を逸らした。
『――昨日』
何かあったかな……。
「――――」
しばらく考えてから、昨日の一件がふと頭に過ぎった。
ああ、そう言えば、男子に襲われそうになったんだっけ。
今の今まで忘れてるってどうよ?
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