144 / 305
⑧良くも悪くもドキドキ。
昨夜はあんなに怖いって思っていたのに、ある意味すごいな俺……。
それだけ月夜のことで俺の頭がいっぱいなんだ……。
思わず苦笑してしまう。
「――?」
「あ、いや……昨日……結局倉庫の場所わからなくなってさ……ごめん」
嘘をついた。
理由はふたつ。
ひとつ目は山本に余計な心配をかけたくないから。
ふたつ目は、昨日の一件を深く探られたくなかったから。
昨日の男子3人組が俺を襲ったのは、『誰か』の差し金で……。
その誰かっていうのはもしかすると、『藤堂 御影 』かもしれないということだ。
まかり間違えば山本にも危害が及ぶかもしれないから。
だからこれは言わない。
月夜にも、このことは言っていない。
あくまでも俺の推測だし、余計な心配をかけたくないから。
「やっぱり迷ったのね……。あんたってしっかりしているようでどこかヌケてるのよ」
山本は腕組んで何度も、『うん、うん』と大きくうなずいている。
ともだちにシェアしよう!