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⑨良くも悪くもドキドキ。
……ほっとけ。
ヌけてて悪かったな……。
口にすればすっげぇ反論が返ってくるのがわかってるから、心の中で言ってみたり。
その時だった。
ふいに鋭い視線を感じたんだ。
顔を上げると冷たい視線とぶつかった。
藤堂 御影。
彼女が睨 んできたんだ。
やっぱ、昨日の件は彼女が絡んでいるのだろうか……。
ゴクン。
緊迫した張り詰めた空気が俺と藤堂の間に流れる。
俺も視線を外さない。
外したら負け。
なぜかそう思ったから。
永遠とこの時が続くんじゃないかと思っていると、だけど視線を外したのは彼女の方だった。
男子に話しかけられたからだ。
とりあえず、助かった。
彼女の冷ややかな視線から逃れることができてほっと胸を撫で下ろす。
彼女は月夜の父親、嘉門 さんと面識がある。
俺が男だって気づかれないよう、気をつけよう。
もう一度、俺は自分がおかれている立場を理解した。
《第9話・良くも悪くもドキドキ。・完》
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