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①ズキズキを胸に秘めて。
◆第十話◆
――その日の俺は、月夜 がどれくらいモテるのかを休憩時間が来るたびに見せつけられることになった。
おかげで胸のズキズキが止まらない。
それくらい月夜のことが好きになったんだ。
自覚すれば、これからのことを考えただけでいっそう胸が痛くなる。
もし、俺が女じゃないってバレたら……。
花音 じゃなくて、亜瑠兎 の方だって知られたら……。
月夜の側にはいられない。
胸が痛い。
あまりの痛さに呼吸ができなくなる。
気がつけばもう終礼だ。
ショートホームルームも最後のチャイムで終わりを告げた。
「花音、ごめん。今日は一緒に帰れないんだ」
月夜が俺の前に来て申しわけなさそうに謝る。
同じ学校、同じ教室にいながら、今日校内で話したことはといえば、月夜から発せられたこの言葉なんだから皮肉なものだ。
それだけ月夜が人気なんだ。
一般人の俺とは全然違う。
月夜は別世界の人なんだって思い知らされる。
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