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⑥ズキズキを胸に秘めて。
いいな、女子は。
月夜に告白しても、万が一にでも受け入れてくれるかもしれないから――。
だけど男の俺は違う。
俺が告白しても気持ち悪いだけ。
月夜に嫌われるのは知っている。
告白しても叶わない。
この恋はけっして月夜には届かないんだ……。
どうして俺、男に生まれてきたんだろう。
結局、俺ばかりが月夜を好きなんだ。
月夜は女の俺が好きなだけ――。
もしかすると、花音の容姿に惚れたのかもしれない。
どっちにしても月夜が好きになったのは俺じゃない。
違うんだ……。
「モテモテだよな、月夜は」
扉の後ろに隠れていた俺は、気がつけば月夜の目の前に立っていた。
「花音……」
「いいよな、モテる奴は……。さっきの子、とても可愛かったし?」
何言ってんだよ、俺……。
こんなのただの八つ当たりじゃないか。
自分でもそう思っているのに、口が勝手に動く。
「妬 いてるの?」
「――っはぁ? ……んなわけないだろ?」
月夜の言葉に図星な俺は、直ぐさま反論した。
否定した声が思っていたよりも大きい。
これじゃあ図星だと言っているようなものだ。
それは俺の、精一杯の強がり。
「ふ~ん」
意地っぱりな俺に、月夜はそう言うと背を向けた。
さっき、女子が走り去っていった出口へと歩いていく……。
――いやだ。行かないで……!!
「……っつ!!」
置いていかないで!!
俺の、側にいて……。
嫌いにならないで。
お願いだから――。
……クンッ。
ほぼ反射的。
俺は月夜の袖を掴んだ。
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