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⑨ズキズキを胸に秘めて。
「そんな顔して、俺をあまり刺激しないで」
月夜は眉根を寄せて苦しそうに微笑んだ。
俺の胸がぎゅっと締めつけられる。
『そんな顔』ってどんな顔?
俺、今。どんな顔をしているんだろう。
わからないけど、月夜を困らせているのは間違いなく俺なんだ。
それが嬉しい。
自然と口角が上がる。
「そういう表情とかね……君は可愛すぎるんだよ。――もう、君には敵わないな……。好きだよ、花音……君が愛おしい」
『花音』
俺じゃない名前を口にされて、胸がまた苦しくなった。
『好き』と、たしかに告げられた。
嬉しいけど、悲しい。
――なぁ、月夜。
『好き』は何に対しての、『好き』?
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