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⑩ズキズキを胸に秘めて。
俺の性格?
それとも花音と同じ容姿をした俺?
だけどそんなこと訊 けやしない。
だってどの道、俺が男だって知られれば、月夜とは、『さようなら』なんだから……。
月夜は華道、葉桜家の嫡男。
由緒ある葉桜家をみすみすつぶすようなことはできない。
「好き、月夜がすき」
俺のこの想いはけっして月夜には届かない。
どう足掻いたって届きやしない。
俺の正体を知れば、このいびつな関係は終わる。
だからせめて――。
花音でいられるその時まで、どうかこのまま――。
「花音? どうして泣くの?」
いつの間にか俺は泣いていたらしい。
月夜が心配そうに俺の顔を覗き込んできた。
「あ、や、これは!! あ、あれ? なんでだろ……」
流れる涙をぬぐってもぬぐっても止まらない。
まるで月夜への恋心と同じだ。
だけど、ここで泣いてちゃいけない。
おかしな奴だって思われる。
「あれ? なんでだろ」
パチパチ。
パチパチ。
涙を止めるために両頬を叩く。
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