156 / 305

⑩ズキズキを胸に秘めて。

 俺の性格?  それとも花音と同じ容姿をした俺?  だけどそんなこと()けやしない。  だってどの道、俺が男だって知られれば、月夜とは、『さようなら』なんだから……。  月夜は華道、葉桜家の嫡男。  由緒ある葉桜家をみすみすつぶすようなことはできない。 「好き、月夜がすき」  俺のこの想いはけっして月夜には届かない。  どう足掻いたって届きやしない。  俺の正体を知れば、このいびつな関係は終わる。  だからせめて――。  花音でいられるその時まで、どうかこのまま――。 「花音? どうして泣くの?」  いつの間にか俺は泣いていたらしい。  月夜が心配そうに俺の顔を覗き込んできた。 「あ、や、これは!! あ、あれ? なんでだろ……」  流れる涙をぬぐってもぬぐっても止まらない。  まるで月夜への恋心と同じだ。  だけど、ここで泣いてちゃいけない。  おかしな奴だって思われる。 「あれ? なんでだろ」  パチパチ。  パチパチ。  涙を止めるために両頬を叩く。

ともだちにシェアしよう!