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⑧はじめてのデートは甘くて苦いカカオの味。

 月夜のシルシがある首筋に触れれば、じんわりと熱を帯びているような気がする。  「……っそ、そんなことにはならない!」  だいたい、俺は男だ。  他の男に好かれるとか絶対にない。  ――とはいえ、俺は今、間違いなく『花音』の姿ではあるが……。  だけど俺の中身は男だし。  俺が花音じゃないって――。  男じゃないって気づいていないのは月夜だけだ!  絶対そうだ! 「そうかな?」 「ならないよ、わたし強いから」  だから同じ男には負けない。  断言しても、月夜は疑いの眼差しを向けてくる。 「前、襲われそうになったのに?」  …………うっ。  痛いところをつかれた。 「あ、あの時は大勢いたから!!」  月夜のことで脅されていたし……だから……。  悔しさのあまり、一度は上げた顔はまたうつむき、唇を噛みしめた。

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