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⑨はじめてのデートは甘くて苦いカカオの味。
「ごめん、嫌なことを思い出させてしまったね。だけどね、俺は心配なんだよ。だって、ほら、花音はこんなにも可愛い。頼むから、俺以外に無防備なところを見せないで」
月夜の頬が俺の頭に触れる。
また……後ろから抱きしめられてしまった。
――なあ、月夜。
本当はね、俺……花音じゃないんだ。
月夜が好きなのはたぶん、俺じゃないんだ。
貴方が好きなのは女の子の花音。
だから俺じゃない。
でも……今だけ――。
今だけでいい。
花音でいさせて……。
月夜が好きな花音でいさせて――。
俺は回された月夜の腕にしがみつくように、自分の手を重ねた。
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