169 / 305

⑪はじめてのデートは甘くて苦いカカオの味。

「…………っつ!!」  恥ずかしくてたまらない。  窓に写った俺の顔は、どうしようもなく真っ赤だった。  きっと俺の心情なんて月夜にはバレバレなんだろうな……。  恥ずかしくて何も言えなくなった俺は、とうとう口を閉ざし、ただひたすら窓に写った月夜を見ていた。 「…………」 「…………」  車内は一気に静かになる。  だけどこの沈黙は嫌いじゃない。  だけどただ静かなだけじゃない。  月夜の視線を意識してドキドキする俺の鼓動が体中に響く。  俺の体全部が月夜を好きだと告げているんだ。  この距離感が……この空気が……たまらなく心地好い。 「着きましたよ」  心地好い沈黙が続く中、月夜と俺は運転手の声で車から降りた。  目の前には大きな挙式場がそびえたっていた。

ともだちにシェアしよう!