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⑪はじめてのデートは甘くて苦いカカオの味。
「…………っつ!!」
恥ずかしくてたまらない。
窓に写った俺の顔は、どうしようもなく真っ赤だった。
きっと俺の心情なんて月夜にはバレバレなんだろうな……。
恥ずかしくて何も言えなくなった俺は、とうとう口を閉ざし、ただひたすら窓に写った月夜を見ていた。
「…………」
「…………」
車内は一気に静かになる。
だけどこの沈黙は嫌いじゃない。
だけどただ静かなだけじゃない。
月夜の視線を意識してドキドキする俺の鼓動が体中に響く。
俺の体全部が月夜を好きだと告げているんだ。
この距離感が……この空気が……たまらなく心地好い。
「着きましたよ」
心地好い沈黙が続く中、月夜と俺は運転手の声で車から降りた。
目の前には大きな挙式場がそびえたっていた。
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