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⑫はじめてのデートは甘くて苦いカカオの味。

「…………」  こういう華やかな場所ってやっぱ緊張するな……。  なんて思いながら、自動ドアに誘われて広いロビーへと足を踏み入れる。 「きゃあああああ!! 月夜くん、お久しぶり~!!」  会場に不似合いなほどの黄色い声が出迎えてくれた。  声の主は新緑色のスーツに身を包む30代の活発そうな女性だ。  ロビーの受付嬢と話していた彼女は一目散に月夜目掛けて駆け寄ってきた。  両頬には小さなえくぼがある。  年上だし、こんなことを思うのもどうかと思うが、愛嬌のある可愛い女性だと思った。  肩までのショートボブの髪は栗色に染めていて、とても話しやすそうな雰囲気がある。 「月夜くんは相変わらず綺麗な顔してるわね~」  彼女はそう言って、月夜の顔を両手で包み込む。 「…………」  ……なんだろう。  すごくムカムカする……。  ――ってか、なんだよ月夜も!!

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