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⑮はじめてのデートは甘くて苦いカカオの味。
「ココノさんっ!!」
「いいじゃない。良かったわね、月夜くんの想いが通じて」
ココノさんの言葉に月夜は顔を朱に染め、慌てている。
こんな表情、はじめて見た。
だけどそっか……。
月夜は花音に一目惚れしたんだ……。
俺じゃない、花音の写真に……。
ズキッ!
痛い。
胸が、痛い。
だめだな……全然ダメ。
俺、ほんとに月夜のことが好きなんだ。
そんな俺の感情を知らないココノさんは、月夜の腹をツンツンと肘で突いてからかっている。
本当なら微笑ましい光景になるはずだけど、俺は無理。
こんなに苦しい。
だって月夜が一目惚れした相手は俺じゃない。
花音なんだ……。
胸が、痛いな……。
「もう……。ここに生ければいいんですね?」
「ええ、お願い」
気を取り直した月夜はどうやらもう仕事モードに入ったらしい。
彼の張り詰めた声が物思いにふけっていた俺を現実へと引き戻した。
俺たちは披露宴の入り口へと移動し、月夜は大きな筒状の花瓶と向かい合っている。
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