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⑯はじめてのデートは甘くて苦いカカオの味。
「たしか、こちらの新郎と新婦は華やかな挙式を望んでいるのですよね?」
「ええ」
「でしたら……」
月夜は、地面に広げて置いてある色とりどりの美しい花々からひとつ、まだ開ききっていない真っ赤な薔薇を数本取り出した。
はさみで丁寧に長さを調節していく……。
そして、次に青紫の花。
薔薇よりも少し小さい円状の花を取り出したかと思えば、指先をそっとそろえて薔薇の隣へと配置する。続けてすごく小さい――まるで霧のような枝分かれしている先に広がる白い花をブーケのように包んだ。
――綺麗。
色とりどりの違う特色を持った花がそれぞれの個性をつぶさず、主役の薔薇を引き立てていく……。
そんな花も綺麗だけれど、月夜の生ける時の真剣な眼差しと優しく花に触れる仕草がとても綺麗だと思った。
「ね、月夜くんって不思議よね」
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