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㉑はじめてのデートは甘くて苦いカカオの味。
「その人って……」
花音のことか?
訊けなくて、俺の口が閉じる。
「君だよ。今日、ココノさんの言ったとおりなんだ。俺は君の写真を見た時……君の凛とした、何者にも揺るがない意思を垣間見たんだ。俺も、こんなふうになりたいとそう思った。そして今、君はこうやって俺の隣にいてくれている。しかも、何も知らない、『華道』に興味を抱いてくれて、俺を知ろうとしてくれている。今日一緒に来たいと言われた時、どんなに嬉しかったかわかる? とても君を愛おしいと思った。今まで以上に……」
……月夜。
そこで俺はようやく月夜の顔を見ることができたんだ。
たしかに、月夜の初めの恋は花音だったかもしれない。
だけど、『ここに来たい』とそう言ったのは、紛れもなく俺自身。
篠崎 亜瑠兎 なんだ。
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