180 / 305
㉒はじめてのデートは甘くて苦いカカオの味。
「月夜……」
顔を上げた俺の目の前には、穏やかな優しい笑顔の月夜がいた。
「好き。大好き。月夜……」
俺は、俺よりも頭ひとつ分高い背の月夜へと背伸びをして……静かに口づけた。
そうすると、月夜も俺の肩をそっと引き寄せてくれる。
……月夜。
道端だということも忘れ、たくましくも繊細である月夜の広い肩に手を添えて、彼に身を任せた。
あたたかな腕の中で思うのは……願うことは、俺も月夜のように、揺るぎない信念をもった人になりたい。
自分を弱いものと認め、そして真っ直ぐに歩いていく人になりたい。
願わくば……月夜を支えたい。
ただそれだけをひたすら願った。
《第十一話・はじめてのデートは甘くて苦いカカオの味。・完》
ともだちにシェアしよう!