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④ライバルは突然牙をむく。
そうは思っていても証拠がないから言えるわけがない。
それに、月夜には心配をかけたくない。
これ以上、迷惑はかけたくない。
「…………」
俺は文句のひとつも言えないまま沈黙する。
彼女は目を潤ませ、今にも泣き出しそうな顔をして話しはじめる。
「あたし……篠崎さんとは友達になれると思っていたの……」
はあ?
誰と誰が友達になるって?
はっ! 笑わせてくれる。
そんなこと、露ほども思ってもないくせに……。
俺はいい子ぶっている藤堂を心の中で毒づく。
「……月夜くん……本当は、こんなこと言いたくないんだけど……」
今まで月夜を一心に見つめていた藤堂は、ふいに俺を横目でとらえた。
彼女の目の奥で光る何かを見た。
間違いない。
何かを企んでいる。
……なんかやだ。
寒気がする。
全身に震えがはしった。
――そして彼女は静かに口を開く。
「彼女は……いいえ……彼女じゃないわね……『彼』と呼ぶべきかしら」
「――!!」
藤堂、まさか俺が男だって知って――?
ああ、嫌な予感が見事的中した。
それは一瞬だった。
だけどたしかに、彼女はにやりと笑った。
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