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⑤ライバルは突然牙をむく。
なんで……。
なんで藤堂が俺の正体を知っているんだ?
だってこのことを知っているのは俺と俺の家族だけだ。
俺の家族は絶対に口外なんてしない。
そんなことをしようものなら自分たちの身に危険が及ぶのは目に見えてわかる。
だから俺の正体を明かすなんて有り得ない。
だったらいったい誰が漏らした?
ああ、寒い。
全身が冷たい空気に包まれて、心の底まで冷えていくのがわかる。
俺は今、立っているのだろうか。
それとも倒れているのだろうか。
平衡感覚 が失われていく……。
「どういうこと?」
彼女の言葉に反応したのは月夜だった。
月夜の声はいつもより低い、威嚇するかのような低音だ。
――この声音は知っている。
俺が三人組の男子に羽交い締めにされていた時に聞いたものと同じだ。
どうしよう。
月夜が怒っている。
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