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⑦ライバルは突然牙をむく。
季節はまだ秋。
それなのに、自分のところにだけ冬が訪れたかのようだ。
とても寒い。
体も――。
心も――。
彼女はにたりと嫌な笑みを浮かべて、小さなボタンを押した。
ボイスレコーダーから聞こえる声は、妹の花音のものだった。
『ねぇ、亜瑠兎 はうまくやってる? あ、ほら。いくらあたしと同じ顔だからって中身まで女になることできないでしょ? でも、安心したなぁ。葉桜 さんの許婚が実はあたしじゃなくって亜瑠兎だって知ってる友達がいて……あたしが言い出したこととはいえ、ちょっとは責任感じてたんだよねぇ』
そこで会話は途切れた。
どうやら再生は終わったらしい。
彼女はそそくさとスカートのポケットへとボイスレコーダーを入れた。
たった数分しかない花音の話。
だけど俺を奈落へと突き落とすのには十分な時間と内容だった。
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