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⑯ライバルは突然牙をむく。

「どういう…………こと?」  月夜の行動は藤堂の意表をついたらしい。目を大きく見開いている。  彼女も俺と同じく、まったく意味がわからないのだろう。  日本人形のように綺麗な顔立ちをした彼女の表情は、みるみるうちに歪んでいく……。 「知っていたよ、花音が男だってことはとっくに、ね」 「うそ!?」 「嘘じゃない。だって、俺はいつだって彼を見ていたから」 「……月夜? 知っていたって……どういう?」 「俺が見ていたのは……ずっと君だった」  乾いた声で尋ねた俺に、月夜は藤堂から視線をはずした。  そして今度は俺を見下ろした。  そこには目を細めて微笑む、優しい……。  俺が好きな、あの笑顔があったんだ。 「俺が一目惚れをしたのも……『華道家』としての俺を見てくれたのも……俺が見てきたのは、いつだって、『花音』ではなく、『きみ』だった」  柔らかな声音で月夜はゆっくりと続ける。

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