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⑰ライバルは突然牙をむく。
「君が誰だろうとかまわない。大切なことは、『君が誰か』ということじゃなくって、俺のことを理解しようとしてくれた『きみ』なんだ。亜瑠兎、俺は初めから君だって気がついていた。好きだよ、いつも真っ直ぐな君が――」
月夜?
好きって、誰のことを?
俺が男だって知っていたって、嘘だろう?
「う……そ? 好きなんて嘘だ。だって、だって……俺は……」
篠崎 亜瑠兎で……。
祖父さんの遺書とは違う奴で……。
「嘘だと思うなら、ここで神に誓えるが?」
「――え?」
半開きになった俺の口に月夜の唇が当たった。
それは花音としてではなく、篠崎 亜瑠兎としての、はじめてのキスだった。
「おかしい……おかしいわよ、あなたたち!! お父様に言うわよ!? それで|嘉門《かもん》おじさまにも言ってやるわ!!」
藤堂は月夜の父親の名を口にした。
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